犬の遺伝学と行動

●遺伝は遺伝子によってコントロールされています。
●遺伝子は行動の特徴だけではなく、身体の特徴にも影響を与えます。
●遺伝は交配で問題となります。

犬の身体の特徴、性格、行動は、多くの要因の複雑な相互関係によって形作られています。食事、環境、社会的発達など、すべてが犬の発育に影響を与えますが、飼い犬の基本的な「下図」は遺伝子の中に設定されています。

遺伝子とは、細胞に何をすべきか、どのように発達すべきかを命令する化学的な暗号の糸のことです。物理的には、このような暗号の糸は染色体と呼ばれる顕微鏡レベルの鎖の中に入っています。染色体は犬の体のほとんどすべての細胞に含まれています。各細胞にはまったく同じ組み合わせの染色体が含まれていますが、細胞ごとに異なる遺伝子が、選択的に作動したり休止したりしています。

特定の遺伝子の活性(または不活性)が細胞の運命、たとえば神経細胞になるか、皮膚細胞になるかを決定します。

犬の遺伝子コード

遺伝子は長いらせん状の分子、DNA(デオキシリボ核酸)でできています。この分子の中で縦方向に並んでいる鎖は化学的な塩基であり、遺伝子コードの「文字」です。遺伝子コードにはA、C、G、Tの4つの文字しかありませんが、これらの文字が並ぶ順番は数多くあり、これらの文字の長い鎖で莫大な量の情報をコード化することができます。

遺伝子とタンパク

一つの遺伝子は、DNA分子によって達ばれるコードの断片です。遺伝子は、細胞に特定のタンパク、たとえば消化酵素、神経伝達物質、毛の元になる構造タンパクなどを作るよう指示したり、他の遺伝子の活性化を調節したりしています。

毛の伸びる早さなど、ただ一つの単純な特徴を調節する遺伝子もあれば、全身に広く作用する遺伝子もあります。行動のような複雑な性質の多くは、多数の遺伝子が相互に働き合ってコントロールしています。

行動への影響

飼い犬を作出する際、人間は選択育種によって犬のさまざまな行動習性を強めたり弱めたりしてきました。たとえば、牧羊犬として作出されたボーダー・コリーは動きに非常に敏感で、祖先のオオカミが獲物に近づくのと同じやりかたで羊に近づきます。しかし、オオカミは追跡を続け、獲物を殺します。

牧羊犬の場合は選択育種によって、わずかな動きを見つけ出し獲物に忍び寄る遺伝的な習性が強調されていますが、相手を殺そうとする本能は弱められています。問題となるのは、このような習性の強化が、作出の目的とは完全に異なる形で現れた場合です。

ボーダー・コリーがわずかな動きにも注目するという遺伝的な能力は、アリが通過した、草の先が風になびいているといったとるに足らないことに対しても発動することがあります。 このことは、一部のペットのコリーで、場合によっては獣医師による治療が必要となるような「神経症的な」あるいは「強迫感にとりつかれた」行動につながることがあります。

ボーダーコリー犬のしつけ

人間が犬のある行動性を強調するために選択育種を行い、後に選択育種の目的となった環境から犬をつれ出し、家庭で育てるようなったために、このような問題が生じてしまったのです。
 

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